2024年8月20日、田中敦子さんの訃報を受け久しぶりに攻殻機動隊を観まして。最近は自分のエンタメを彩ってくれた方々が旅立つニュースが増えたなぁ…と、しみじみ感じます。画像はバトーさんに倣った手向けの花です。
攻殻機動隊と田中敦子さんについて
攻殻機動隊の詳細はコアなファンも多いしWikipediaにお任せします。
本稿は主にSTAND ALONE COMPLEX(以下SAC)絡みの話になります。GHOST IN THE SHELLやイノセンスも好きなのですが、もしもまだ攻殻機動隊未視聴の方がいらしたらSACの方がエンタメ感が強く見やすいのでオススメ。かく言う私も笑い男から入ったクチでね。
田中敦子さんはこの物語の主人公、草薙素子少佐を演じておられました。もちろんニコール・キッドマンの吹替ほか多数出演作はあるのですが(田宮良子も良かった!!)、私にとってはやはり田中さん=少佐でしたねぇ…。色気のある声質ながら、それ以上に猛者揃いの9課を率いる凛々しさにあふれた名演でした。場をビシッと締める声色に、少佐の頼もしさを感じたものです。
ちなみに田中さんは群馬出身だそうで。群馬の「あっちゃん」には魔王(BUCK-TICK櫻井敦司)だけでなく少佐もいたのですね。
訃報を受けてネットをさまよう中で、田中さんの半生を語ったインタビュー記事を見つけたので下記にリンク貼っておきます。
個人的にはインタビュー動画や演技以外でお見かけする姿に穏やかなイメージがあったのですが、うちに秘めた熱量はすごかったんだなと感じる記事でした。仕事終わりに会議室使って片っ端から事務所に電話をかけまくる行動力、私にはないです。見習います少佐…。
人生に響く攻殻機動隊の名言
攻殻機動隊は台詞回しが格好良いものが多いため名言も多々あるのですが、個人的にはSACシーズン1の第12話「映画監督の夢」が特に印象に残っていまして。以下、物語のカギになる老人と少佐の会話です。
(少佐がとある映画を見終えて)
老人:どうだった?
少佐:確かにいい映画と言えなくもないわね でも どんな娯楽も基本的には一過性のものだし またそうあるべきだわ 始まりも終わりもなく ただ観客を魅了したまま手放そうとしない映画なんて それがどんなにすばらしく思えたとしても 害にしかならない
老人:ほう 手厳しいな 我々観客には戻るべき現実があるとでも言いたいのかね
少佐:そうよ
老人:ここの観客の中には現実に戻った途端に不幸が待ち受けている者もいる そういう連中の夢を取り上げ あんたは責任を負えるのかね
少佐:負えないわ でも夢は現実の中で戦ってこそ意味がある 他人の夢に自分を投影しているだけでは 死んだも同然だ
老人:リアリストだな
少佐:現実逃避を”ロマンチスト”と呼ぶならね
老人:フフッ…強い娘よのぅ いつかあんたの信じる現実がつくれたら呼んでくれ その時 わしらはこの映画館を出ていこう
セリフの掛け合いが格好良いのは勿論なのですが、それ以上になんだかグサッと刺さる少佐のセリフでした。
補足しておくと、このセリフを言った際の少佐は単に冷めていたわけではなく、むしろ映画の内容自体は心から認めておりまして。それこそ珍しく涙を流すほどに、感動もしていたのです。
それでも
例え目を背けたくなる現実があったとしても、夢中で居続けられる世界があったとしても、現実と向き合い戦うことは生きている以上避けて通れない、と。夢は現実の中でつかみとれ、と。
少佐の主張にハッとさせられます。
BGMで流れている「The End Of All You’ll Know」の旋律も相まって、とても印象的なシーンになっていますので未視聴の方は是非一度観てみることをお勧めします。上記でオチが分かってしまったとしても、視聴後の余韻は変わらないと思いますので。
あと名言といったらシーズン1の第21話に出てきた
斉藤、そいつをよこせ
ですかね。ま、こう書くとギャグっぽいですが実際は
サイトォォォ…そいつをよこせえぇぇええぇぇぇぇっっっ!!!!
ってテンションなのですが。この珍しくキレた少佐の怒号と直後に映される、
故障していない片腕と体を使ってバカでかいライフルの弾を装填 → コクピットへ至近距離で引き金を引く
…を黙々と繰り返す少佐の雄々しさが印象的でした。人生訓とか関係なく、単にインパクトで選んだ名言です。
華を添える菅野よう子さんの曲達
攻殻機動隊はサントラも良い!どのアルバムも良いのですが、特に好きな曲をご紹介です!
Rise
シーズン2のオープニング曲。数ある名曲の中からナゼこの曲を最初にご紹介したか。それはOP開始0:59くらいで映る
攻殻立ちがカッコ良すぎるから
これに尽きます。コレやっただけでラブコメ漫画の五等分の花嫁キャラですら、ナゾの格好良さが醸し出されるという破壊力。
一筋縄ではいかない猛者たちと、それを率いる少佐の堂々たる所作。聞くたびアガってしまうのは、あの光景にシビレた感覚を思い起こさせるからだと思います。
I Do
美しい。ただただ、美しい…。
The End Of All You’ll Know ~ トルキア
これは攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.3の1曲目と2曲目なのですが、続けて聴くことをお勧めします。1曲目で陰鬱とした切なさが漂ったところから、突き動かされるような衝動を感じる2曲目に入っていく流れに感動すら覚えます。
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society O.S.T 全曲
「曲じゃねえじゃねぇか!」と言われそうですが、スミマセン、アルバムごとお勧めでして。箱推しでして。個人的には仕事中忙しくなって焦り始めると、「Player」の2:47~3:50の間奏が頭に浮かんできてドーパミンが出ます、なぜか。
Inner UNIVERSE
まぁもう絶対に外せない名曲ですね。攻殻といえばコレというくらい印象的な曲。1シーズンのOPでした。伸びやかな声と幻想的な曲が攻殻のサイバーパンクな世界観と混ざり、謎の神秘性を帯びてます。パネェ…。歌っていたOrigaさんは2015年に亡くなりましたが、ゴーストは今もここに生きています。
田中敦子さん、ありがとうございました。
田中さんの演じる少佐は凛々しく美しい、無二の存在でした。
少佐の声があなたでなければ、ここまで攻殻機動隊に惹かれていなかったかもしれません。それほどまでに、私にとって少佐=田中さんでした。
「SAC_2045最後の人間」の舞台挨拶でおっしゃった
ネットにアクセスする時、『攻殻機動隊』にアクセスする時、私たちは、私はいつまでも皆さんのそばにいます。
この言葉が胸に響きます。きっとずっと響き続けるのでしょう。忘れるわけありません、ずっと。
最高の演技の数々、本当にありがとうございました!